【バドミントン】家で自主練するときに考えるべきことを「動機づけ」の観点から考える

こんにちは。

バドミントンプレーヤーと、その指導者・親のためのブログ「シャトルサークル」の管理人(@shuttle_circle)です。

ここのところしばらく「休養って大事でっせ!」ということを言い続けています。この話、しばらく続きますので以下にまとめておきますw

しかし、そんななかで「どうしても所属クラブの練習量が足りないので、外部での練習をしたい」という焦りや悩みを抱えるかもしれません1

以前書いたとおり、そんなとき「自主練」を強いるのはよくない。

ではどうすればいいのでしょうか?今回はそんな話を書いていこうと思います。

家での「自主練」について

そもそも家での「自主練」は2つに大別することができます。

  1. 親が主導でやらせる
  2. 子供が主体的にやる

上記のうち 2. に該当するのであれば、よほどオーバーワークにならない限りは問題ないと考えています(奈良岡功大選手は「家で壁打ちしすぎて家の壁に穴が空いた」なんて話もあるぐらいです)。

上記のうち 1. の弊害は以前書いたとおりですね。効果がほとんどない上に、長期的にその競技に対するモチベーションが続かなくなります。

「子供が主体的に研究・自主練をやっている」状態が理想なのでしょう。家に帰ってから動画を見て真似しようとしたり、なわとびをしてみたり、素振りをしてみたり…。

しかしそうは言っても、なかなか自発的にならない子供も多いはず(というかむしろ、それが普通です)。

このまま放置していると「親が主導で自主練をやらせる」家の子のほうが結果が伴う…なんて事態にもなりかねません。

指導者や親としては、有望な子が練習量で抜かされていく姿を見たくない。歯がゆい。じゃあどうするか。「そうと悟られないように動機づけしてあげる」というのが今回のキモです。

外発的動機づけと内発的動機づけ

そもそも「動機づけ」というのは motivation の訳語で、心理学をやっているとよく登場する用語です。「モチベーション」というカタカナ語でなんとなくでわかった気になるのもいいけれど、少しだけ意味の確認をしておきましょう。

動機づけとは「人間に行動を起こさせ、その行動を持続してある一定の方向に向かわせる心的な過程」である。つまり、ある一定の方向に向かわせるための何らかの刺激が必要となる。

引用元:楠本恭久(編著)『はじめて学ぶスポーツ心理学12講』86頁、福村出版、2015年。

「動機」という言葉は motive の訳語だそうで、有機体の動因となるものを指します。語源的には “move” などに近いものがありそうですね。

motive ということばは、motion とか、movement のような他のことばと関連がある。動機は、その基本的な意味では有機体を運動させるか、動かすものである。

引用元:フランク・J・ブルノー『実例心理学事典』178頁、青土社、1996年。

さて、動機づけ motivation の水準によってパフォーマンスや練習の質が異なるということを、指導者や親が知っておくことは大切です。

動機づけというのは、行動する目的がその手段が一致している「内発的動機づけ」と、行動することが目的を叶えるための手段となっている「外発的動機づけ」とに大別されます。

なんのこっちゃわからないかもしれないので、具体例を挙げてみましょう。

たとえば「バドミントンが好きだからバドミントンの練習をする」人の場合。これは内発的動機づけです。

  • 目的:バドミントンを楽しむ
  • 手段:バドミントンの練習をする

内発的動機づけとは、新しい技に挑戦することや、純粋に楽しいから身体を動かすなど、自身の本来備わっている興味や達成感によってもたらされる動機づけである。

引用元:楠本、86頁。

一方で「練習に行かないと怒られるからバドミントンの練習をする」人の場合。これは外発的動機づけです。

  • 目的:怒られるのを回避する
  • 手段:バドミントンの練習をする

外発的動機づけとは、指導者からほめられたり、まわりから注目されたり、賞金をもらったことによる動機づけである。

引用元:楠本、86頁。

…スポーツにしろビジネスにしろ、「内発的動機づけ」「外発的動機づけ」について、多くのウェブサイトではここまでしか説明されていません。

この説明は、ある意味で恣意的であり不十分です。これだけ読めば誰だって「内発的動機づけを目指すべきだ」と考えるでしょう。しかし、外発的動機づけも立派な動機づけです。

孫引きで大変恐縮なんですが、当該箇所を引用してみますね。

スポーツや運動を継続的に実施し、質の高い練習を自律的に行うには、外発的動機づけは妨げになると思われがちである。しかし、速水敏彦(1998)によれば、外発的動機づけの経験が自己に浸透し、それが自己価値や態度となって内発的動機づけを生じているのであり、外発的動機づけは決して妨げになるものではなく、むしろ内発的動機づけと連続した動機づけであるという。

引用元:楠本、86頁。

自己決定理論

実は外発的動機づけの中にも段階があるんですよね。たとえば「勝ちたいからバドミントンの練習をする」人の場合。これも外発的動機づけです。

  • 目的:バドミントンで勝つ(優れた競技成績を残す)
  • 手段:バドミントンの練習をする

たとえば「バドミントンがうまくなりたいからバドミントンの練習をする」人の場合。これも外発的動機づけと言えるでしょう。

  • 目的:バドミントンの技能向上
  • 手段:バドミントンの練習をする

外発的動機づけをいくつかの段階に分けることが可能であるという考え方は「自己決定理論」と呼ばれています。

  • 外的調整(賞罰や報酬がモチベーション)
  • 取り入れ的調整(義務感や名誉心がモチベーション)
  • 同一化的調整(成長や目標がモチベーション)
  • 統合的調整(それ自体が自然なこと)

上述した「勝ちたい」「うまくなりたい」などは、外発的動機づけであるものの非常に強固で自律的な動機と言えます。同一化的調整や、統合的調整の段階に来ています。ほっといてもしっかりと練習するでしょう。

そもそも、最初から内発的に動機づけられている場合なんてほとんどないと思います。

トッププレーヤーですら、バドミントンを始めるきっかけというは「友人に誘われたから」「家族がやっていたから」が多い。初期段階では取り入れ的調整の段階です。「親にやりなさいと言われたから」という子もいるかもしれない。この場合は外的調整ですね。

その後、バドミントンを続けた理由は「友人が練習にいっているから」「うまくできると褒められたから」など、それでもまだ「取り入れ的調整」の段階です。

どこかで「強くなりたい」「勝ちたい」などが加わってきて、最終的にはバドミントンをやるのが自然なこと(統合的調整)、バドミントンそれ自体が楽しい(内発的動機づけ)まで至りそうです。

したがって、究極的には内発的動機づけを目指せばいいんだろうけれど、外発的動機づけの低い段階から順を追っていけばいいと思います。

孫引きで大変恐縮なんですが、この図表の概念モデルがとても参考になりますね。

引用元:楠本、87頁

それから、Web上にあっていますぐ日本語で読めるものを探してみました。2件ほどいいのが見つかったので紹介しときます。

とはいえ上述の文献やサイトのみだと「外発的動機づけで、統合的調整の段階」と「内発的動機づけ」との区別が自分のなかでちょっと曖昧なままです。

その意味で、いま最も読みたいのは上記図表の出典元であるこの本ですね。来月ぐらいに読んで、たぶん記事にします。

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本題:子供が自発的に練習するためにはどうすればいいか?

はい、ではそろそろ本題です。お待たせしました(笑)

以上のことを踏まえると、指導者や親として「プラスアルファの練習をする」ときに考えるべきことは「せめて子供が自律的な行動をするように導く」ことでしょう。

大人でもそうだと思うけど「やらされてる」「言われたから渋々やる」ときほどモチベも落ちるしパフォーマンスだって落ちる。

ここにこそ「指導者や親の主導で自主練をやっている」ことの弊害があります。大人が主導で自主練をするとき、子供に「イヤだ」という権利はほぼないに等しい(拒絶したら叱られるのは目に見えているから)。

とはいえ「やらないと叱られるから自主練をする」とき、子供は賞罰によって動機づけられているので、外発的動機づけの中で最も下位の「外的調整」の段階に位置します。これでは質の高い練習は期待できません。

したがって「やらされている」と感じさせないように、自らすすんでやるように仕向けるのが大切です。

初期段階では、親の主導など「外的調整」「取り入れ的調整」でもいいかもしれないけれど、どこかの段階で子供が「同一化的調整」「統合的調整」へとシフトするように考えるといいでしょう。

具体例1

たとえば、練習が休みの金曜日に近所の体育館をとってサーブやショットの「自主練」をした場合を考えてみます。

金曜日の練習の成果が、試合中に目に見えて出た場合(例:サーブがしっかり打てたことで勝てた)なら、「金曜日に練習してよかったよね!」など、努力(過程)を褒めてあげれば、次からは自然と「金曜日に練習したい」と言い出すことが期待されます(※個人差があります)。

最初は「言われたから渋々」であったとしても、「褒められる」「結果が伴う」などの報酬があれば、その行動は「強化」されていきます(オペラント条件づけ)。

どこかの段階で「勝つために金曜日練習する」といった「同一化的調整」、さらには「日課で当然のように金曜日に練習している」といった「統合的調整」に至ることが期待されます。

また、あるときから「金曜日に体育館あいてるけどどうする?」など「自分で選択している」という演出をすることも有効でしょう。肝要なのは「その行動を、自分で選択している」という「指し手的感覚」を子供自身が持つことです。

このあたりは、子育ての経験がない25歳独身なので、経験談を話せないのがなんとも悲しいところです()

具体例2

ほかにもこんなのが考えられます。

  • 一緒にトッププレーヤーの映像をみてバドミントン談義をする(特に親がバドミントンプレーヤーの場合)。
  • 長いラリーがしんどいという話題になったときに「奥原希望選手は、トレーニングとして二重跳びをやっているらしい」とさり気なく伝える。

繰り返しになるけれど、肝要なのは「その行動を、自分で選択している」という「指し手的感覚」を子供自身が持つことです。

効果的な練習方法や科学的なトレーニングには、指導者の助言が必要である。しかし、プレーヤー自身に練習の主人公であるという意識がないと、中身の薄い練習になってしまう。主体性のない依存的な認知や感覚からは、動機づけは芽生えてこないのである。

引用元:(公財) 日本体育協会『公認スポーツ指導者養成テキスト 共通科目II』57頁、2016年。

ほとんどの人は「外発的動機づけ」で動いていると思うし、自分だってそうです。とりあえず「同一化的調整」を目指してみましょう。

競技目標があれば、すでに「同一化的調整」の段階に来ています(目標のためにバドミントンの練習をがんばる)。その目標を漠然とした者で終わらせるのではなく、輪郭を浮かび上がらせるために、こういう問いかけができるといいでしょう。

  • 夢や目標はなんですか?
  • なぜその夢や目標をもったのですか?
  • それはいつまでに達成したい?
  • その目標を達成するためのライバルは、どこのチームの誰ですか?

さらに、こんな項目もあっていいかもしれませんね。

  • 半年後、どうなっていたい?
  • 1ヶ月後、どうなっていたい?
  • 1週間後、どうなっていたい?
  • そのために、今日何をがんばりますか?

まとめ

繰り返しになるけれど、大人の役割は「やらせる」ことじゃない。

とはいえ、やらなければならないと考える時期もくるかもしれない。

その場合は「自発的にやるように導いてあげる」ことを、指導者や親は考えるべきなのでしょう。


当サイトのコンテンツは永遠に未完成です。

バドミントンのプレイヤーやコーチと「相互にやり取り(シャトル)」する「場(サークル)」にしたい。そんな願いを込めて作ったサイトです。

ご指摘、ご質問等あれば、ぜひコメント欄などにお願いします!

  1. たとえば「都道府県代表レベルを目指したいけど週に3回ほどしか練習がない」というような場合ですね。

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2 件のコメント

  • こんにちは。
    今回のテーマは、親やコーチにとっては一番難しい問題かも?というか永遠のテーマですね。
    子どもの自主性にゆだねるのが一番だと思いますが、それではゲームや遊びに気が向いてしまうのが普通だと思います。
    色々と演出をしてみても最後は半強制的にバドミントンに向かわせていました…。拝読させていただき、今までとは少し違う視点からアプローチ出来るかも?と、思えました(笑)
    結果をすぐ求めず気長に子ども達と向きあっていこうと思います。
    これからもボチボチと更新していって下さい。では…。

  • >マツダジュンイチさん
    コメントありがとうございます!

    これは本当に難しい問題です。結局は量がモノを言う場面もあると思います。小中学生で優れた成績を収めている人を見ると、周りの人がいろんな練習場所に引っ張っているからこそ結果が出ている例も多いですからね…。練習が終わったときに子供が「今日、やってよかったな」と思える(=報酬がある)ようであれば、親や指導者が主導の練習でも価値はあると思います。

    そもそもこの記事を書いた動機は「休みを作ってあげてほしい」というものでした。自分自身に子育ての経験もなく具体的な解を持っているわけではないのですが、何かのヒントになっていれば幸いです。ひきつづきこのテーマはときどき書いていきますね(いまは書くべき事柄を書き尽くしてしまいましたので、湧出を待ちたいと思います)。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    1992年生まれで、大阪府出身・在住。バドミントンのプレー歴は13年。指導歴は4年。(公財)日本体育協会の公認上級指導員(バドミントン3級)です。小学生から大人まで、男女問わず初心者から中級者を対象としたバドミントンの指導を仕事の1つとしています。(→さらに詳しく